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レスキュー!阿弥陀さま救出作戦

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■解体~塗装はがし

きちんと直すには丁寧に、すべてをバラバラにする必要があります。予想通り、接着剤である膠(にかわ)がだいぶ弱っていました。これでは近いうちにいずれ仏体はばらばらになってしまったでしょう。たくさんの部材に分かれていきます。

立派な仏師さんの手によるものです。塗装を剥がしてみると彫の高い精度、仕事の丁寧さがはっきりと伺うことができました。

■木地修理

写真は不足している光背の木部を”補材”しているところです。彫刻で削り出す前段階の仕事です。

矧ぎ目(接着する面)は平らにしてできるかぎり密着が良くなるようにします。

補材がおわったらまわりの彫刻の流れに合わせながら彫り出していきます。

↑補材後

↑彫刻後

かなり破損が進んでいます。塗装をはがしてようやく傷み具合が判明します。この傷みを覆い隠すようにぶ厚い塗装が施されていたため、なんとなく表情がぼてっとしていたようです。

実に地道な作業が延々と続きます。それでも少しずつ良くなっていくのがわかります。

こんな調子で数カ月かけて木地を直していきます。

■木地完成

台座・仏体・光背の木地(木部の修理)が完成しました。

修復事業はまだまだ、道半ばです。

■漆塗り

漆塗りと一言にいってもたいへん多くの工程があります。先ずは下地がきちんとしていなければ、上塗りまで悪影響が出ます。木と木の矧ぎ目(はぎめ)の処理が悪いと、最後まで線が見えてしまうという残念な仕上がりになってしまいます。

そのため、矧ぎ目の部分は刻苧(こくそ)彫りと呼んでいますが、三角刀で彫り込みを入れ、刻苧(漆と木の粉)を充填し紙を貼るという作業を行います。こうすることで矧ぎ目が消えてフラットな下地を作る準備ができるわけです。また、木がボコボコしている部分も、刻苧で整形します。

↑ 新材と旧材の矧ぎ目に刻苧彫りをしてあるのと、旧材の凹凸を埋めて整形しています。

■学生さんと

実はここ何年か、静岡文化芸術大学の講義のひとコマを担当させていただいています。

そのご縁で、漆を学ぶ学生さんとのコラボレーションで修理の一部に携わってもらう企画をしました。ご住職からもご賛同を頂きまして実現しました。

矧ぎ目に刃物を入れてもらっているところです。

刻苧と和紙で谷を埋めてもらっているところです。

とても丁寧な仕事をされるみなさんだったので、スムーズに次の工程に移ることができました。

なお、木地には同時に木固めとして漆を摺ってあるので、茶色になっています。

いいお顔になってきました。最初のお顔とは別物ですね。ここから下地を付け、中塗り・上塗りとなります。

■設置場所の工事

聖寿寺さまの本堂に阿弥陀様の安置場所を用意します。たいへんな目に遭われた仏さまですから、今度は良い場所を御用意したいです。

設置場所は内陣右手のこちら。ここに雛壇を作りつけで製作していきます。

工事スタートです。さて、どんなものが出来上がるでしょうか。

左右の柱です。新たに入れる框の外側線どおりに欠いて、後ろから押し付けます。

なお、材料は国産材の栂(つが)です。摺り漆をしてあります。

格狭間(こうざま)の枠を嵌めていきます。

きれいに納まりました。こういう大型仏具も製作しております。

余談ですがこんな仏具も過去に製作しました。よくあるカタログ品とは一線を画した鏧子台(けいすだい)です。

■塗り、そして金箔仕上げ

最終的に箔押しをするので、使用する仕上げの漆は”箔下(はくした)漆”です。

ここで強いツヤ仕上げをすると、金箔がピカピカになりすぎ自分の顔が映っちゃったりして興ざめになります。

この漆を完全に乾かしてから、金箔を押していくわけですが、金箔を押すのにも漆を使います。漆を摺り、絶妙な乾き具合を見ながら押していきます。

箔押作業は風のない密閉された場所で行いますので、写真を撮っておりません。。。

■完成そしてご遷座(せんざ)

台風でお堂が倒れてからはや4年。いよいよ阿弥陀さまがご遷座される日がやって参りました。

それではどうぞ!

なぜこの仏像がここにあるのか、きちんと残しておきます。

さて、いかがだったでしょうか。

仏像修理の裏側をしっかりめにご説明しました。古いモノが時代を越えるためには、正しい技法と正しい素材を用いて、手をかけ修理することが必要です。

何十年、何百年後かわかりませんが、しっかりした知識と技術のある人に修理してもらえることを願っています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

祥雲/山梨仏具

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