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轅新調、うるし塗り!

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こんにちは、祥雲です。
タイトルの文字「轅」読めましたでしょうか。

これは轅(ながえ)と読みます。川越型山車のいわゆる土台の部分、山車で一番大きく大切な材料です。祥雲では川越市旭町三丁目「信綱の山車」の轅を新調・漆塗りしました。ちょっと詳しくご紹介できればと思います。

■木鼻彫刻、シノギを削る!

10年以上自社で天然乾燥させたけやきの材料に下絵を写し、輪郭を取り、シノギを削ります。「シノギを削る」と一般的にも使われる言葉ですが、木の輪郭を表と裏両方から削ってゆき、山になる部分を鎬(シノギ)と言います。

ちなみに、写真のように装飾的に木口を加工したものを木鼻(きばな)と呼んでいます。この木鼻も本当に奥が深く、色々な形、意匠があります。古い建築物などを見続けていると、だんだん美しさ・かっこよさみたいなものを感じるようになってきます。逆に「これはちょっとなぁ~」というものもわかる様になります。

■ 漆塗り、木地呂仕上にて

ここからは漆の工程の写真を紹介していきます。まずは地を付ける作業ですね。「地」って何なのさ?という声が聞こえてきたので説明しますと、木にいきなり漆を塗っても表面の凹凸が消えず平らな塗装面が得られません。ですから、朱を入れたり、黒で塗ったりする面は必ず「地付け」が必要です。

塗装関係のお仕事の方が見たら「うそだろォ~ッ!?」っと叫ぶ写真です。「地」は砥の粉(とのこ)と漆を練って濾したものをヘラでつけ、数日乾燥させてから研ぎ出します。下地処理に何日もかかるこの方法は、現代の塗装業界ではありえない手間のかけ方です。

でもよく考えてみて下さい。古い仏像や文化財の数々は、堅牢で変質しないこの下地で守られているからこそ、何百年も朽ち果てずに今の時代に伝わっているんです。これがウレタン塗装で可能でしょうか?ものづくりの考え方の問題です。

使う分の漆をお茶碗に”濾して”入れています。使う分だけその都度その都度・・・。

「木地呂(きじろ)」漆塗り。艶の下にけやきの木目をみせる塗り方です。ちなみに、漆に透明クリアーはありません。こういう茶褐色が漆本来の色です。

アレ?木目を見せるんじゃなかったの??・・・ハイ、まっくろになっちゃいました。

最後に朱を差します。下地がちゃんとしていないと、朱をさしても木材のぷつぷつが消えなくて困ったことになります。下地が大切なんです。

ウチの工場で組み上げ完成です。写真奥に見えるのが旧轅ですね。

■ 塗り上がってから、漆は生き続けます

漆は塗りたてが完成ではありません。5年~10年ほどの時間をかけて硬化し、色も透けてきます。さっきの写真ではまっ黒だった塗膜が透けて下の木目が見えている、「木地呂」塗りです。この写真で塗り上がりから3年くらいです。

■ 大切なモノは”漆”で

漆はむやみやたらに高いと思っていませんか?「うちの山車なんかに漆なんて恐れ多い!」・・・なんてことをしばしば聞きます。でもそんなことはないんですよ。確かに手間もかかるし乾燥は特殊だしかぶれるし大変なんですが、別の業者さんのところでウレタン塗装で行うのと、祥雲で漆塗りをするのとでは金額はそんなに変わりません。

残念な話ですが、ウレタンで山車の塗装をしている一部の業者さんの金額設定は、漆塗りの金額設定と同じくらいになっています。それだとかなり割高になりますし、中には漆と言いながらウレタンで塗っているという恐ろしい話も現実です。

漆塗りが一日に一度塗れるとしたら、硬化剤を混ぜて吹付できるウレタン塗装は一日三回塗れることもあります。これで手間賃が同じな訳がありませんよね。それでいて寿命は漆の方が段違いに長い・・・聡明な皆さまには日本人が漆を愛してきた理由が十分お分かりだと思います。

”大切に長く使うモノ”には、責任と自信をもって次の世代へ渡せる「漆塗り」が最善だと祥雲では信じ、こんな面倒くさいやり方でやっています。ぜひ応援していただけたらうれしいです。

祥雲

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