■ 錺(かざり)金具は名脇役
錺(かざり)金具は名脇役、山車や神輿には無くてはならない存在です。美しく仕上がった漆塗りも、木口や釘を隠す金具が無いとその真価を発揮できません。整然と打ち付けられた錺金具が山車全体を一つの工芸品としてまとめ上げてくれます。
■ 下絵、透かし唐草
内側の白い部分を抜くので”透かし唐草”と呼びます。山車の寸法、面の大きさを測り下絵を起こします。銅板の厚み、金箔かめっきか・・・おまかせになりがちな錺金具ですが、山車の印象を左右する大切な存在ですから、きちんとした寸法取り、金鍍金の色にこだわって製作すれば大きな存在感を発揮します。
■ 「一点モノ」を作る
自動車の部品のように大量に作られるものには”型”があります。ところが「一点モノ」は手で作るほかありません。数百の鏨(たがね)を使い分け、魚々子(ななこ)打ちや蹴彫(けりぼり)などの技を用いて目指す仕上がりを得る。錺師の技がここで求められます。
■ 苦労人の金具です
お祭りに行ったら錺金具をじっと見てみてください。先端が折れたり、めっきが剥がれていたりと、実は金具は苦労が絶えない部品です。欠損部の補作、めっき修理など損傷に応じて修理方法もさまざまです。
■ 色にこだわらなきゃ勿体ない!
良い金具は時間の経過とともに何とも言えない素晴らしい風合いを生み出します。磨いて新しくめっきをするのは簡単ですが、それはとても勿体ないことで、文化財ならばしてはいけない事でもあります。できるかぎり古い被膜を活かすため、筆で部分ごとにめっきを付ける「筆めっき」という方法もあります。新しい山車にも古い山車にも、それに合った金具の色があります。
■ 錺金具修理・製作例
今までに修理・製作した金具の写真です
■ 鋳物(いもの)金具
鋳物(いもの)は型に溶けた金属を流し込んで作ります。力神のひざ下の「組」。古い文字意匠を復元したもので、15㎝四方ですが2㎏を超える重みのある金具です。
製作方法としては、欅に文字を彫刻、これを元に鋳型を作ります。仕上がった鋳物を磨き鍍金を施す。木を扱う人と金属を扱う人、鍍金加工する人がいるからこそできる品です。
正面の文字「護王車」は先々代の兜金に使われていた文字意匠を復元。透かし唐草の箱型。固定金具は最低限に留め、すっきりしながらも堂々とした図柄が目を引きます。
■ 鉄の兜に焼き付け漆
鉄製の箱金具。鉄の表面に漆を直接焼き付けるとそれが下地になり、その上から漆を塗ることができます。漆は温度と湿度が高くないと乾燥しませんが、火気の高温でも急激に乾燥・硬化する性質を利用した技法です。
水銀鍍金 金銅装笈
金銅装の「笈(おい)」修験者が背中に背負うリュックみたいなものです。たいへん古いもので500年ほどの年月を経ているのではないかと見られています。最下段の金具が亡失していたため復元しました。製作年代を考慮し、水銀を使った鍍金を施し、周囲の経年の風合いに色合わせしています。
お問い合わせ
錺金具新調・修理から鉄製構造金具、鋳物金具まで幅広く取り扱っています。金具の取り付け工事も行っていますので、お気軽にご相談ください。
金具製作実績(一部抜粋)
犬山蘇登町「梅梢戯」
(修理)前壇錺金具一式
尾張横須賀「楓童車」
(修理)三味線胴錺金具
(修理)高欄錺金具
(修理)平台輪木口鉄製兜金
下半田南組「護王車」
(新調)台輪木口兜金「護王車」
(新調)台輪木口鋳物金具「巴」「南組」
(修理)壇箱錺金具
住吉神社
(修理)神輿錺金具一式
中泉西町「鑾留閣」
(新調)台輪木口兜金
(修理)山車錺金具一式
春野町若身「鷹尾連」
(修理)破風・垂木金具一式
平尾八幡宮
(修理)神輿錺金具一式
袋井市土橋「橋友車」
(新調)錺金具一式
※五十音順