平成14年建立。二重鉾の四ツ車、唐破風付きの囃子台で回り舞台。囃子は信亀会囃子連。人形は川越祭りを興した「松平信綱公」。この名を冠する「川越型」の山車改修工事例です。
■ 轅新調、漆塗り
轅(ながえ)と呼ばれる土台を新調しました。木地呂(きじろ)漆仕上げ。漆は5年をかけて硬度が上がり、何百年単位で木材を守る役割もあります。これほど耐用年数が長く、仕上がりが美しい塗料は世界中どこを探しても日本の漆塗りだけです。
上の写真とぜひ見比べてください。塗りたてはまっ黒ですが、上の写真は3年を経てだんだん透き色になり、欅の木目が見えるようになってきました(木地呂漆塗)。徐々に透けていく漆の不思議な性質も日本人が漆を愛してきた理由の一つかもしれません。
■ 車軸・軸受の交換
山車の重さ×速度から最大負荷を計算し、その5倍の負荷まで耐えられる車軸を新調しました。今までの車輪から古い軸受を取り外し、オイルレス(無給油)ブッシュの軸受を新たに打ち込みました。
■ 上段四方幕「二十八宿」
東洋の世界にも星座があります。二十八宿(しゅく)といわれ、「すばる」はその一つです。これをモチーフに金糸で仕上げたのがこの幕です。旭町三丁目の「旭」をイメージした太陽が雲の向こうから現れています。
■囃子台まわりの大改修
山車正面の向拝部分を囃子台(はやしだい)と呼びます。彫刻・大工工事・漆塗りをセットで行う大改修をさせていただきました。
山車を解体する工事が伴い、柱・虹梁・斗組をほとんど新調します。なおかつ今までの屋根を使う工事ですので、間違いがないよう、細心の注意を払って寸法を決めました。
彫刻は「木鼻獅子」「持ち送り」「脇障子」「柱・脇障子・虹梁の地紋彫り」を新たに追加いたしました。
■ 箱棟の龍
囃子台の屋根上の龍を彫らせて頂くことになりました。材質は楠。写真は、荒彫りを終え仕上げに近づいている段階です。この後、漆下地を塗り、金箔の二度押しで仕上げます。
高い位置に取り付ける彫刻は下から見上げてどう見えるかを想定し、グッと下を見下ろすよう、顔をかなり下げています。
■ 龍の目線から川越まつり
大工方として山車に乗った時のプレミアムな一枚、龍の目線から見た祭りの景色ですね、贅沢!
■ 静岡と川越と・・・不思議な縁
祥雲の本拠である静岡市から川越市、遠いなぁと最初は思いましたが、けっこうお祭りは共通していることが多いんです。まず、山車の形が江戸型を源流にもっていて同じ。祭人の役割も同じ。なんだかご縁を感じてしまいます。色々と学ばせて頂いて静岡市の山車祭ももっと盛り上げていきたいなぁと思う今日この頃です。
お問い合わせ
山車・屋台・神輿の無料点検、修理、メンテナンスなど行っています。修理計画の作成や助成金申請のお手伝いもしていますので、お気軽にご相談ください。
工事内容一覧
【木工事】
(新調)轅土台一式
(新調)上段鉾昇降装置
(修理)本体分解仕口調整
(修理)回転台分解調整
(修理)車輪軸受(オイルレスメタル)交換
【彫刻】
(新調)せいご台「獅子」「旭紋」
(新調)せいご台「龍」「鯉」
(新調)下段三味線胴「亀」「鯉」「飛龍」
(新調)回転台「七宝繋ぎ」「紗綾型」
(新調)下段三味線胴「亀」「鯉」「飛龍」
(新調)正面懸魚「鳳凰」
(新調)正面欄間「龍」「宝尽くし」
(新調)左右欄間「鶴」「雉」
(新調)正面箱棟「龍」
(新調)上段鉾「霊獣」「花鳥」
【足回り】
(新調)車軸、軸受一式
【幕工事】
(新調)上段鉾四方幕「二十八宿」
【漆工】
(新調)轅木地呂漆、面朱