
浜松市浜名区にある「根堅(ねがた)地区」天竜川が平地と山間部のさかいで大きく湾曲する山際に位置します。この一帯はお祭りどころで、多くの山車・屋台を見ることができます。根堅東組の山車は建立から30年が経過し、祥雲としてもいつもと違った試みとなる「全解体・漆みがき」という工事となりました。
■ さっそく作業開始
山車解体は一日かけて行い、屋根だけを山車蔵に残します。なるべく工事費を抑えるためばらばらにする必要のないものはそのままの形で。

重量キャスターの台車にのせてお留守番
工場では長年蓄積した汚れ(手垢・ヤニ・その他もろもろ)を除去して磨きの準備を整えます。
漆みがきはくりかえしによって、少しずつ艶が戻ってきます。何回行うかという点ですが、これは塗膜の状態によって変わってきます。これで十分という艶が上がるまでくりかえします。


さらに、現場でお留守番をしていた屋根にも「漆みがき&箔押し」を行います。



少し手間をかけるだけでこんな段違いの艶を取り戻すことができるんです。塗り直しだけが選択肢ではないということをこのページを通じて皆さんに知っていただきたいと思っています。
■ 土台も磨いてます

柵で囲まれ、あまり見えることがない土台部分もきっちり磨きます。漆みがきは生漆を使いますので、大物だと乾燥が難しく時期を選んで行う必要がありますが、預かり直後のくもった表面から見違えるような艶が戻ってきました。

■ 腰板の塗り直し
この形式の山車にとって腰板は”顔”であり、塗りのきれいさ・板(材木)の立派さを示す重要な部分です。腰板は「木地呂塗り」とい方法で塗り直します。木目を完全に消さずに活かす塗りで、けやきなどの板目を見せる技法として一般的です。



最初の赤茶色の写真が施工前。全体的に曇って艶が完全に引けています。つぎの二枚は塗り直し後。本物の天然漆だけを使い、建物の天井が歪みなく映るほどの艶です。漆には徐々に透けて(明るく)なる性質があります。数年かけて杢目もじっくり見えてくるようになるでしょう。
■ 箔押しの金パワー
金の存在感は強大なるもので、どんなに綺麗に塗りが仕上がっても、あるべき金がないとどこか不完全に見えてしまいます。
特に柱の四隅に押される「面金」は、山車全体のフォルムをはっきり鮮やかに見せます。下は、本件での柱面金箔押しの様子です。





■ 車輪の修理
今回の事業のもうひとつの目的は車輪の修理を行うことでした。前輪は梶付きの小径車輪、後輪は直進固定の大径車輪です。分解掃除し、大量の砂利交じりのグリースを除去します。



つぎに、後輪の”は”通り(正面から見て左側)は、ガタガタと振動・異音が生じるようになったとの事で、点検を行ったところ軸受けブッシュ(鉄)が木部をいじめて穴が拡大、結果的に軸受けブッシュが自由に動くようになっていまっていました。また、ねじ切り部もネジ山が無くなり、それもガタつきの一因でした。



このように、木製車輪には(例外はありますが)鉄の部材が必要不可欠です。とはいえ性質は全く違う素材ですから、上手に組み合わせる・整備を継続しないと、このようなことが起こりがちなのです。
今回は後輪は両方とも鉄たが(鉄輪)の新調(焼き嵌め)と、は通りの軸受けブッシュの修理を行いました。


■ さいごに、山車ぐみ
他にもご紹介したい作業はたくさんありますがこの程度にしまして、夏まつりを前に再び山車を組み、納めさせていただきました。






■ 山車に漆を塗る理由ってなんだろう
うるしは他の塗料よりも優れていると言われますが、なぜそういわれるのでしょうか。
塗ってから5年ほどは「若い」と言われます。硬化し艶も出ていますが、硬さは最大に達していません。5年ほど経って最大硬度になってから、そこから品質を保てる時間が漆が圧倒的に長いと言われています。さらに、塗ってから百年単位で結果・経過を観察できているのは漆だけ、結果「実際に100年もつ」ことを立証しています。
現行の化学塗料が何年もつのか、それはあと100年経たなければわからないことなのです。漆の場合は、縄文時代のものが残っていますから…なんと数千年。今までの仕事の中で、80年経過したとは思えない塗りがいい艶を残しているのを見ると、これに敵う塗料があるのかとつくづく感じてしまいます。
さて、塗りは山車全体を装飾・保護し、印象を決定づける大きな要素ですが、その塗面のほんとうの価値を捉えることは難しいことです。ペンキでもウレタンでも漆でも色がついているという意味では同じです。
ただし、これらは神事です。神さまの乗り物である「御神輿」は漆塗りが正式とされています。おなじように山車も神事であり、さらに山車を作った人、ご先祖さまのものでもあったわけです。お祭りを継承するためには「祭り文化」と「正しい技法」両方が伝わることで益々発展していくものだと私たちは思いたいです。
お問い合わせ
山車・屋台・神輿の無料点検、修理、メンテナンスなど行っています。山車の健康診断(無料点検)・修理計画の作成や助成金申請のお手伝いもしていますので、お気軽にご相談ください。
工事内容一覧
【木工事】
(修理)山車解体・接合部締め直し
(修理)野屋根板交換
(修理)は通り後 車輪修理
【漆工】
(漆みがき)土台/地覆/腰板枠/虹梁/柱/琵琶板
(塗り直し)腰板/抽斗/柱中手すり框
(箔押し)腰板/虹梁/持ち送り/斗組/破風板/垂木
【彫刻】
【金具工事】
(修理)既存錺金具再取り付け
