お祭り前の山車組み・掃除・飾り付けなどやることは数あれど、安全点検や傷んだ箇所のチェックなどできているでしょうか?
このページの内容は、2021年コロナ禍の時に山車所有者である皆さまで山車点検ができるようにと書いたものを修正したものです。
今ここにある山車はだれのもの?
山車・祭屋台は土地の神様に楽しんでもらうことを目的とした「囃(はや)す者」の道具のひとつとして産まれたものです。だから山車の形式や彫刻の題材などに建立当時のご先祖さまたちの想いや、その時の信仰心が根っこにあります。
やがて、その土地に生まれた自分が”たまたま”使わせてもらっている。これを引き継いで、また次の世代に正しい形で残し伝えたいという大きな流れがあります。だからこそ「建立当初の姿」を基本として修理方針を考える大切さがあります。
私たち祥雲は、昭和後期ごろの過度なハデハデ競争の中での”思いつき”や”良かれと思って”の断片的な修理・改造の影響でどんどんおかしくなってしまった山車をたくさん見てきました。
こうした断片的な修理は見た目に違和感を与えるだけでなく、お金のムダもかなりあります。昭和平成も遠くなり、今では持続可能なサステナブルを目指す社会になりました。お祭りも例外ではなく、徐々に変えるべき部分もあるかもしれません。でも、変えちゃいけない根っこの部分はやっぱりあると思います。
と、前置きが長くなりましたが本項の主題である「山車を長期間大切に使っていくために必要なもの」これはつまり、山車をどう扱っていけばいいのかという”保存・修理の計画”です。
計画といってもそうかしこまったものではなく、
・現状の把握
・今後の修理する順番
この方針をある程度はっきりさせることに尽きます。
もちろん、祥雲では山車点検を行っておりますので、ぜひお気軽にご相談頂きたいところではありますが、先ず自分たちで点検してみることも非常に大切と思い、このページを作りました。
みんなで山車を点検してみよう(点検表ダウンロード)
山車がいま、どういう状態で、これからどの順番でどう修理をすればいいのか。それを知るための点検です。ぜひ、山車をそんな目で見てみましょう。
祥雲で使用している点検表と同じものを掲載しますので、ぜひダウンロードして使ってください(PDF:1.0MB_A43枚)

さて、次の項からは山車を点検するときのちょっとしたコツや指標みたいなものをお伝えしたいと思います。
実践編① 足廻りと構造体
山車の構造の強さは「木と木の接合部分(仕口)」つまり差し込み部分がしっかりしているか。でかなり決まってきます。まずは山車の床面に乗って、柱をつかんで体全体で山車を前後にゆすってみましょう。前後にゆすられても、ぐっと元の位置にもどれば大丈夫(柱の根ほぞがしっかり効いている)でしょう。
逆に、こわいくらい前に行ってしまうとか、大きな音がする。これは赤に近い黄色信号です。「柱が傾いたままになった」「前後は大丈夫だけど横揺れがひどい」などありませんか?
ここまで進行してしまうと、毎年動かすたびに様々な部位にひずみが生じ、材料が割れたり彫刻が落っこちたりと影響が出るようになります。

次に足廻り。これはシンプルですが非常に繊細です。
- まっすぐ進みますか
- 異音はありませんか
- (運用)毎年グリスアップしていますか
- 後光(スポーク)ぐらぐらしていませんか
- 鉄輪はかなづちで叩くとビィーン・・・と、振動したような音がしませんか
部材の点検と共に、曳き回しに支障が無いかみんなに聞いてみるのも大切です。それと、くれぐれも山車の下に潜る際は安全とグリスの付着に気を付けてください。
実践編② 高欄

高欄はひときわ目を光らせて下さい。乗員が手を掛ける、安全のための手すりです。装飾性を込めた作りの部材ですから、老朽化による外れなど、事故に繋がります。

高欄は上から
- 架木:ほこぎ(丸棒の手すり)
- 平桁:ひらげた
- 地覆:じふく
という横材になっていて、これを束や柱で縦につなぎます。特に架木が人が手を掛ける部分なので、ここを重点的にチェックしてください。ぐるぐる回転したり、ガタガタになっていませんか。持ち上げてみてスコンと抜けてしまいませんか?
実践編③ 金具・幕
安全面に直接的に関わる部分ではありませんが、幕や金具などの「懸装品」の点検も必要です。とくに幕に関しては傷みが進行する前に「新しい安定した生地へ刺繍を移し替える」という修理方法があります。

作り直すにはお金もかかるし身動きが取れずこまっているというお話よくききます。今では考えられないくらい手のかかった刺繍などもひょっこり残っていたりします、こういうものはぜひ後世に残していきたい宝ものです。
実践編④ 彫刻
木彫刻のページでもご紹介していますが、ちいさなカケ・割れなどはどうしても生じます。人が乗り、うごくものですからある意味しかたありません。見てほしいのは「取り付け部分」。カタカタになっていませんか?曳行中に落下してしまうというお話もよく聞きます。
彫刻の折れているところを探すだけではなく。しっかり取り付けられているかどうか、裏側の取付部分を見たり、正面から見て丈夫な部分をもって軽く引っ張ってみたりと負荷をかけて外れないかどうか、確認してみてください。

あとは保管方法、山車に付けたままでしたらお祭りの後にハンドブロワーなど弱めのエアーで埃を払っておくことも梅雨どきのカビ防止になります。山車に布(通気性のある)をかける。庫内にバケツで水を張っておき過度な乾燥防止対策(塗装にも良い効果がある)も効果的です。
彫刻を木箱にしまっている場合は比較的安心ですが、出し入れの時に折る可能性がとても高いです。あと気を付けて見てほしいのは取り付け方。毎回ねじ留めしていたりするとどんどん痛んできますから、ぜひ見直してみましょう。
実践編⑤ 綱や房など懸装品
運動会でお父さんたちが綱引きをしていたら突然綱の真ん中からブチッ!っと切れて、みんなころんじゃった光景見たことありませんか?
あれは体育用具室の地面に直においていたため、土の中のバクテリアに繊維が分解されてしまった結果です。曳綱も同じく、長いあいだ地面に放置してはバクテリアの餌になってしまいます。最低でも山車の上に、できれば専用の場所を用意して撚りが戻らないよう巻き付けておきましょう。
実践編⑥ピカールと言う悪魔
私たちが山車保管場所を見させて頂いて、もしこの悪魔を見かけた場合は必ず聞きます「これは何に使っているんですか?」と。。。
ピカールは金属磨きの研磨剤で強力な歯磨き粉みたいなものです。これを正しく使っている町内はほとんどありません。というか、かなりの確率で使う事のデメリットが勝ります。
今までに目撃した間違った使い方
・金箔を磨く → 金箔がはがれて下の黒い塗装が出てくる
・金めっきを磨く → めっき層を削り取り、地金(銅)が出てくる
・さらに磨く → 地金すら削り取っていく(彫金の表面が無くなる)
・木彫刻を磨く → 意味ないし、白い研磨剤が木目に入って取れなくなっている
・塗装を磨く → 光沢のあった表面が曇り、こまかいキズだらけになり戻らない
以上はすべてピカールという悪魔の仕業です。

ピカールは平面的でめっきのない銅・真鍮を磨くのに適していますが、凹凸があるものを磨くのはほぼ無理ですし、白い粉が目詰まりして残ります。たとえ使うのをやめても使ったという証拠は永遠に残り続けるのです。
・めっきしたものは磨かず、水拭き・乾拭きが原則
・金箔はできるだけさわらない(押し直すしか修理方法はない)
・塗装を磨くには強すぎる
・使えるとしたら、擬宝珠(ぎぼし:高欄の柱の上に乗っているスライムみたいな形の鋳物金具)くらい
みなさんの山車保管庫にピカールはありませんか?
これからの扱い方
ここまで、ざっくりですが点検のポイントをお伝えしました。

点検はしたけどこれからどう維持管理していこう。
ここからはなかなか難しい問題です。どの順番で?どんな方法で?いくらかかる?これを整理できれば見えてくるものがだいぶ多くなります。ぜひ、祥雲にそのお手伝いをさせてください。
以下のリンクから、祥雲で行う山車の点検・修理保存計画のことをご紹介していますので、そちらもご覧ください。

