■ はじめに
山車の修理は、「こわれてる」「汚く見えてきた」から始まることがほとんどです。気づいた誰かが言い出して、徐々にみんながそう思うようになっていきます。
「私が知ってる業者に聞いてみるよ」「お金のかかることだから一つの業者じゃなくて相見積もりをしよう」
そんな感じで保存会・委員会が動き出します。修理事業の完了までには長い時間かかりますが、本当に大切なのはこれからご紹介するような「直す前の話し合い」。
これでだいたいの結果がきまります。
■ いまあるお金と、これから集めるお金
技術的な話はわきに置いて、このくらいの修理をしたいと計画を立てたとします。今手元にあるお金と、これから集められるお金はどのくらいか。お金で無理をして後が続かなくなってしまったり、全然レベルの低い修理で妥協してしまっては元も子もありません。
寄付は無関心層にどう働きかけるかが悩みどころ。仲間うちでない人にお願いするのはおっくうだし、苦手な人もたくさんいますから、つい諦めがちになります。その場での説得とか、熱い思いのほとばしりとか、効く人には効くかもしれませんが今どきじゃないですよね。下の方でご紹介しているような例もありますので、ご参考になればと思っています。
■ 「お願いがうまい=集まる」ではない
寄付に積極的でない人、どんな人でしょう
・反対しているわけじゃない
・ケチなわけでもない
・ただ「よくわからない」し「自分はこの出来事に乗り遅れたままお金を出すのかあ」というむずかしい気持ち
悪意のない人であれば、おおよそこのような心境。逆にしっかりした説明があればサッと寄付してくれる人もいるでしょう。
以下に、いくつかのポイントを箇条書きします。
・〇〇保存会、〇〇修理実行委員会などの「組織がやっている事業」であることを明確にする
・後日でもアクションを起こしてもらいやすい体制を作っておく
・その場で判断させない
・金額も決めない
・返礼品で釣るような態度を取らない(寄付額に永久に名前が載ると言われても嬉しくない)
・書面やパンフレットを渡す(ページ下部に具体例)
・事前にお願いに回ることを伝え、その通りに伺うようにする
逃げ道と言っては失礼かもしれませんが、熱意は静かに伝えつつ、受けた方が圧倒されずに、後でもアクションを起こせる(こちらは受けられるようにしておく)ような「余裕」を持たせておく必要があるでしょう。
■ お金を出す=協力のすべてではない
もし、寄付金がその人にとって事業への協力のすべてであったなら「ただ集金を払っただけ」と思うだけで「出すもの出したから、口を出す」という選択肢になってしまうかもしれません。
「修理を終えるまで、うまく行くように協力をお願いします」「見守ってください」「こんな形でお返しさせてもらうつもりです」「見に来てください」こんな言葉で自分にはまだ協力の余地が(お金以外にも)あると感じてもらうことも必要でしょう。
「寄付金」でなく「協力金」とか「賛助金」とかに名称を変えることも、お金を出す人の意識を前向きなものにしてくれる可能性があります。
■ 上手だなと思った例
以下に、すばらしいと思った例をご紹介します。どこのご町内かわからない書き方をしておりますのでご了承ください。
まず、きちんと委員会の体制を整え(修理事業完了までの時限的な組織)代表者・役職を人選。〇〇実行委員会と名称を定めました。実行委員会はお祭り組織の一部であり、修理事業の中核となる数人(世代をまたいで)で構成されていました。
このような体制を整えても、けっして拙速な動きはしませんでした。まずはお祭りに参加してくれる人たちの理解を得ることから始め、「直したいよね」を共有し、それを広げていく努力をおこなっていました。
この裏の動きとして、並行して弊社祥雲でお見積もりをご依頼いただき、実行委員会の皆さまはその修理方法や仕様をちゃんと理解してくださいました。所有者側における施工方法の理解というのは、祥雲という業者が信頼に足るのかどうか推し量る意味だけでなく、寄付を求める段階で、住民の方に対する説得力(具体的にはパンフレットの内容に反映された)に大きなちがいが生まれました。
寄付をおねがいする手順はこうです。「修復事業ご協力のお願い」というパンフレットを作成します。厚い紙で、ごっつい印刷しても透けないものです。印刷はA3フルカラーで、二つ折りにした4ページ構成。表紙には明確に「ご協力のお願い」と記し、次ページ以降は山車の来歴(意外とみんな知らない)・彫刻の写真・作者の由来・現状と主な修理予定箇所・いきいきとした祭の人々の様子の写真を掲載。そしてこのパンフレットの一部が切り取るようになっていて、そこには寄付金申込書と領収書が事前に印刷してありました。これは初めて目にした工夫です。
申込書の近くには、”〇月〇日以降にお伺いします”と記載。”実行委員会として山車修理の為にこのような活動をしているので協力してくれませんか”と事前に理解してもらう時間を設けているわけですね。来たときに支払ってもいいし、別窓口としても一定期間は毎週土曜日の夜に会所で寄付受付をするという体制を取っていたのも本気度を感じとってもらうための大きな要素でした。
■ 「よくわからない集金」から公共性のある事業に格上げされている
この例は、町内の集金とは明らかに違ったものだという印象を与えます。公共性のある、正当なものに変化させています。
・事業主体(実行委員会)が明確に書いてある
・あくまで自由意志
・金額は決めない(自己記入)
・領収書がある安心感
・厚めでフルカラーのしっかりした造りのパンフレット
・「ご自宅にお伺いします」という真摯だが、静かな熱意が伝わるテキスト
夕飯を食べた後のゆっくりした時間に玄関先で熱く説明されるよりよっぽど安心だし、現代的で信用できる方法です。地域に貢献できるという気持ちが動き始めるよう、できる限りの工夫と時間を使った例として、祥雲ではいつもこれを手本にしています。
