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掛塚の坂田歌吉棟梁の流れをつなぐ、小池佐太郎氏による四輪内輪式一層唐破風屋根の山車。山車の解体修理・天然漆による塗りを施しました。浜松市根堅の山車改修工事例です。

■ 60年越しの総漆塗り

昭和34年の建立からおよそ60年。「堅地(かたじ)天然漆塗り」という漆塗りの最上級と言われる技法を用いて施工しました。

100年単位で塗膜の維持を証明しているのは漆だけ。日本の多くの文化財が証明しています。とりわけ「堅地」とよばれる下地が「漆塗りの本体」です。木を守るにはしっかりとした下地が絶対に必要です。 下地がおろそかで表面だけに漆が乗っていても、長期の塗膜維持は期待できません。

見えないところにも漆を使います。漆は塗料としてだけでなく、木を守り、粘り強く丈夫にする力もあります。

塗りが完成すると下地の品質は確認できません。だからこそ、きちんと堅地で丁寧な仕事をしているかどうか、私たち施工側のモラルと気概に委ねられています。

■ 持ち送りの彫刻

山車の修理に合わせて彫刻を新調。厚みのある材料で存在感のある”波濤”の意匠です。

普通は彫刻に塗装はしませんが、ここには天然漆を何度も塗り重ね仕上げました。漆は樹液、ウレタンは化合物。同じ用途なのに出自がまったくちがう不思議です。山車を形作る技法や素材も”伝統文化の継承”という大きなくくりの中に含まれている「修理業者に求められる責任」だと思います。

■山車背面の改造

三星社は掛塚の山車に近い形式を持っています。ただ山車背面に抽斗がなく、縁かづらとの高さ的な縁が切れてしまっている構造だったため、ここを改造し抽斗三杯を新設しました。

抽斗の取っ手にもこだわっています。洋風タンスの引手みたいなものでは粋じゃないってことで、鉄の直角が冴える形状にしました。

■ まさに遠州、美しい唐破風

文句なしに三星社の唐破風は良い形。ここ遠州では伝説的な大工棟梁である坂田歌吉の技を継ぐ、小池佐太郎氏の作です。

だからこそ、漆が塗られ、金具が取り付けられた姿は壮観です。ぜひ本物を見て、その美しく力強い唐破風を見てほしいです。

■ 夜祭に映える、漆塗り

谷崎潤一郎著「陰影礼賛」では漆塗りの器についてこう書かれています

”日本の漆器の美しさは、そう云うぼんやりした薄明りの中に置いてこそ、始めてほんとうに発揮される”

”それを一層暗い燭台に改めて、その穂(火)のゆらゆらとまたたく陰にある膳や椀を視詰めていると、それらの塗り物の沼のような深さと厚みとを持ったつやが、全く今までとは違った魅力を帯びだしてくるのを発見する”

”「闇」を条件に入れなければ漆器の美しさは考えられないと云っていい”

漆の厚みのある塗膜は、夜の提灯や灯火を映しながら、ゆらゆらと黒く底光りするような闇を見せながら人々を瞑想に誘い込むという。

祭人の愛する夜祭のエキゾチックな雰囲気に、他の塗料には全く追随できない力を持っている。

”そして我々の祖先がうるしと云う塗料を見出し、それを塗った器物の色沢に愛着を覚えたことの偶然でないのを知るのである”

お問い合わせ

山車・屋台・神輿の無料点検、修理、メンテナンスなど行っています。山車の健康診断(無料点検)・修理計画の作成や助成金申請のお手伝いもしていますので、お気軽にご相談ください。

    メールまたはお電話でお返事させて頂きます。

    工事内容一覧

    【木工事】

    (新調)背面抽斗廻り
    (新調)斗組
    (新調)持ち送り
    (修理)山車解体・組み直し

    【錺金具工事】

    (新調)唐破風金具
    (新調)腰板
    (新調)縁かずら

    【漆工事】

    (新調)堅地天然漆塗り(全部)

    【彫刻】

    (修理)一式

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