こんにちは、祥雲です。
私たち祥雲が10年以上温め続けていた図柄の天幕が今年完成し、お披露目となりました。
■ 磐田市中泉京見塚「高栄社」
当ホームページでもたびたびご紹介している高栄社の山車。大唐破風の御殿屋台です。ここ中泉の祭りでは二輪の山車と、四輪の山車の両方が曳き廻されています。

■ 見送り幕「黄芭旦図」
さて、今回の幕制作に先だって制作した 見送り幕「黄芭旦(きばたん)図」 をまずご紹介させてください。
”きばたん”とはつまりオウムの一種。頭の上に黄色の羽があるのが特徴です。大きい個体だと60cmくらいになります。日本にはいない貴重な鳥であるという事から珍重されました。きっと頭も良くてお話したりできるんだと思います。

背景を濃紺にすることによって、白い体が浮かび上がり、より印象的に見えるように工夫をしました。この幕を入れさせて頂いたのが2016年ですから、早いもので7年以上が経ちました。

こだわったのは色糸の”ぼかし”。細かく糸の色を変えることで陰影と本物感を与え、より写実的なものに見せています。逆に、右写真のえさ台は濃緑・黄緑と徐々に色が変わるグラデーションの部分に「相良刺繍」という一粒一粒を縫って面積を縫いつぶしていく手間のかかる技法で仕上げたところが自慢のポイントです。
■ 新造天幕「鸚哥(インコ)窓景」

さて、いよいよ今回完成した幕のご紹介となります。トップ画にもしている、お気に入りの構図です。
赤色の羅紗(らしゃ)に、金糸の相良刺繍(手間がすごく掛かるつぶつぶ縫い!)で丸い窓枠を作り、そこからカラフルなインコたちが身を乗り出すように周りを見ているという少し変わった、しかしどこにもないものを作りました。
制作にあたっては、大前提としてわれわれ祥雲にて下絵・鳥の資料・色の指定・大きさと位置まできっちり意図が伝わるような膨大で正確な資料を作ることです。イメージだけではなく、それを形にしたものをわかるように伝えることが大切で、だからこそイメージ通りのものができてくるわけです。


糸は絹糸を染めたものを使っています。彩色した下絵のどおりに色分けできています。もちろん本物のインコの色を参考にしていますから、ふわふわ感など刺繍でなければ表現できないものがここにあります。

葉っぱを咥えながらよそ見をしているこの子も愛嬌あります
■ 幕の取り付け工事
最後の肝が取り付け工事。
どんなに立派な刺繍ができても、ぴたっと取り付けできなければ元も子もありません。事前に山車を測ったうえで幕の寸法を決めていますが、実際に付けて答え合わせをするまでは息が詰まるほど緊張します。
特に今回、獅子の木鼻彫刻がかなり低いところに付いているため、この下端に幕の高さを合わせると、すごく下付きの幕になってしまいます。うまく獅子をかわしながら高さを維持し、柱の外々よりも少し出るくらいの、絶妙な取り付けができました。ようやく一安心です。

■ お披露目、祭礼
10月最初の金土日が府八幡宮の例大祭、中泉の祭りです。
府八幡宮(八幡さま)の神社に様々な形式の山車が勢ぞろいし、大鳥居から市中へ曳き出すのが見どころの一つ。
高栄社の山車もお宮に入りました。

見送り幕「黄芭旦(きばたん)図」そして今回新調した天幕「鸚哥(インコ)窓景図」ようやく並んでお披露目となりました。

最初に、この図柄を10年間温めていたと説明をいたしましたが、実はこの構図は今までにもほうぼうでお客様にご提案を繰り返ししてきました。いずれも採用には至りませんでしたが、それは山車の雰囲気とか、好きな題材があるとか、地域の由来を大事にしたいなどの理由はさまざまでした。
ですから、高栄社の皆さんがこの絵を気に入りご注文をいただいた際には、「やはりこの山車に入るべきだった」んだと思ったものです。
見送り幕に「黄芭旦」天幕に「鸚哥」、華やかで可愛らしく、荘厳さもあるたくさんの鳥たちが山車と町内を彩ってくれるものと思います。

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