祥雲です。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。まもなく6月、春のお祭りシーズンも終え、空気も湿っぽい季節です。とはいえ、こんな日和だからこそできることをして過ごしたいですね。
さーて、今回は仏像修理にまつわるお話になります。
ご存じの方も多いと思いますが、お仏像にはランクがあって、えらい方から”如来、菩薩、明王、天”と順になっています。そして”如来”と言えばご存じ釈迦如来をはじめ、阿弥陀、大日など…同じ仏教でも本尊と定めている仏はさまざまです。
そんな中で、”阿弥陀さま”にまつわる数年がかりの修復ストーリーをお話いたしましょう。
■ある日、懇意にして頂いているお寺さまからレスキュー要請!
舞台は静岡県磐田市竜洋の草崎という地区。昔から懇意にして頂いている聖寿寺さまよりご連絡を頂きました。
”台風で、地域で管理しているお堂が倒れてしまった。中に阿弥陀さまがいるので救出してほしい”
ほとんど人命救助のような救助要請を請け、全員で救助に出動!
柱や壁はどこへ?まるで屋根だけだったかのように倒れてしまっています
本当にこの下にお仏像があるのか、ちょっと心配になりました。。。
■果たして阿弥陀さまは無事なのか
見ていても作業が進まないので、上からどんどん除去するしかありません。屋根瓦を外し、土をどけ、屋根板を撤去していきました。
余談ですがこの屋根瓦の下の土。土葺きといって、土の粘度を利用して瓦を固定しています。なので瓦自体は釘などで留めておらず、土も乾ききってパラパラになってしまっているので撤去もそこそこ順調にすすみました。
だんだんわかってくる。日焼け止めが必要だったと(11月)
アーッ!なんか箱みたいなものが・・・ッ!
だが焦りは禁物。無理に引き出さず、上から順々にどけていきます。と言いたい所でしたが、中身が気になるためすこしだけ開いてみると・・・
いらした——!
■ついに全貌が明らかに
チラ見の影響でやる気が出ましたので、より丁寧に屋根をどけていきます
箱は厨子(ずし)という収納保管のための仏具(おそらく誰かの手づくり)でした。厨子自体、木が割れてしまっていますが、ハコ自体は潰れていませんでした。
この箱がなかったら中のお仏像が大変なことになったのは確実!
お仏像は”厨子”があるとないとでは寿命が全然違います。お仏像をお祀りしてきた方々、ありがとうございます。
地区の皆さんも一安心です。
一時はどうなることかと思いましたが、無事にレスキュー完了です。さて、このお仏像はこれからどうなっていくのでしょうか
■ここから仏像修理のお話
さて、まずは阿弥陀様であるのを見分けるには御手の印相(いんそう)を見て下さい。この形を阿弥陀印といい、お釈迦さまの定印とは少し違います。
全体を見てみると、割と最近(と言っても数十年以内)に修理されているようです。金箔がしっかりのこっていますし、衣部分の彩色もしっかり残っています。
でもなんだか・・・シャープさに欠けるというか、お顔がぼってりしているというか。。。すっきりしません
底面の板はやはり新しそうです。
光背も寄木部分の接着力がなくなりバラバラです。
ここから何が言えるかというと、取れてしまった箇所以外もみんな接着力が無くなっていて、少しの衝撃でバラバラになってしまうだろうということ。これは仏体・光背・台座すべてに言えることです。
■大変な修理になる予感
前提として仏像は完成したら永久にその姿を保てるという設計になっていません。
寄木造の発明によって小さな木材から大きく複雑な仏像を作ることができるようになりましたが、接着剤である膠の寿命とか、表面を覆う下地や彩色の寿命とかがあるからです。つまり適当なスパンで修理をすることを前提に作られているのです。
修理が必要になるのが100年先だとしたら、100年後の人が「正しい方法で修理」してくれるかどうか。一番むずかしい、根っこの部分です。
ご住職と一緒に
■きちんとした修理をしよう
修理はこのような方針で進めることになりました。
・全て解体し、全ての塗装を剥がす ・欠損部分を補材し、削り出し ・組み直しは一からやりなおす ・漆、胡粉などの天然素材を使用する
時間をかけ、確かな方法で、次の修理までの期間をできるだけ長くなるよう。きちんとした修理をしようと決めました。
(つづく)
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