静岡の良い木材産地と言えば春野町。気田の欅は全国でも超がつく有名な良材で、木材市場でも別格の存在でした。私たちも春野町の木材にはとてもお世話になっています。その春野町若身に残る、二輪屋台の修理事例をご紹介します。
■ 鷹尾連の”鷹”
山車正面の御簾脇(みすわき)の左右に配された「松に鷹」。松と鷹の組み合わせは昔から愛されてきた伝統的な構図です。決して厚い材料ではありませんが、年輪がとても細かくやはり良材、繊細に彫られた彫刻です。
同じく水引幕「松に鷹」。どっしりと存在感のある鷹の姿もさることながら、金糸の松葉。刺繍に手間を掛けた見事な幕です。これ見たさにお祭りに足を運ぶ方もいるとか。
度肝を抜かれたのはこの正面の腰板!けやきの一枚板で上下の幅がなんと80cmほどもあります。一枚の無垢板でこの幅が取れるとは、さすが春野町と思った瞬間です。さらにこの板、ただ大きいだけではありません。
杢(もく)が板面いっぱいに出ています。ただでさえめったに出ない杢がこんな大きな板全体に。この板を誰が選んでここに嵌め込まれたのか、その経緯にすら興味が湧いてくるほどです。何度も言いますが、さすが春野町。
■ 漆修理
今回の修理は車輪・朱高欄・屋根一式の漆塗り直し修理。ここでも春野町らしい良い材料を発見。この朱高欄の架木(ほこぎ:一番上の丸棒)は、写真左端の柱を貫通して後ろの脇障子まで届く一本ものの材料です。全く反りの無い良材です。
車輪は塗り直し修理です。古い下地を剥がし、堅地に黒漆金箔仕上げ。もっとも漆の映える組み合わせです。
破風板の下にある太平鰭(たいへいびれ)の蒔絵。金箔がはがれ、黄色の下地が露出しています。
千鳥の部分は金粉と銀粉を使い修理。本来の金色が蘇りました。
垂木部分。板の継ぎ目を中心に縦に亀裂がありました。金箔の仕上がりは下地の漆の丁寧さによって変わってくる繊細なものです。顔が映るようなピカピカではなく、どんよりとした良い具合に仕上げました。
■ お披露目
修理を終えお披露目が行われました。末永くここ春野町若身で大切に曳かれ続けられる山車であって欲しいと思います。
お問い合わせ
山車・屋台・神輿の無料点検、修理、メンテナンスなど行っています。修理計画の作成や助成金申請のお手伝いもしていますので、お気軽にご相談ください。
工事内容一覧
【木工事】
(修理)屋根一式
(修理)高欄一式
【漆工事】
(修理)車輪 黒漆面金仕上
(修理)高欄 朱漆
(修理)屋根一式 黒漆、金箔仕上(一部朱)
(修理)太平鰭 漆、金粉を用いた修理
【金具工事】
(修理)破風板金具再鍍金
(修理)垂木金具再鍍金
(新調)垂木欠損金具
【幕工事】
(新調)背面紫幕