建立は大正年間。形式は古く、かつての江戸の祭りの面影を残しています。本来は牛が曳いていたとされています。二重鉾の四ツ輪に囃子台。静岡にはこの型が30台ほどありましたが、今やここに残る5台のみとなってしまいました。貴重な江戸重層型山車の改修工事例です。
■ 車輪の新調と、焼き嵌め
焼き嵌め(やきはめ)は、熱膨張を利用した技法です。薪を燃やし800℃ほどに熱した鉄輪を熱いまま嵌め込み、一気に水をかけて冷却します。温度が下がった鉄輪は収縮し、木組みの車輪をものすごい力で締め付け完成します。
車輪には硬い樫と欅を使っていますが、鉄輪の締まる力は強烈です。もはや木と木のすき間には髪の毛一本入りません。
■ 漆塗り、漆箔(しっぱく)
金箔の厚みは0.1マイクロメートル、つまり1ミリの1000分の1の厚さだそうです。すぐ剥がれそうに思いますが、下地に漆を塗り、温度・湿度管理をして金箔を押せば想像以上の丈夫さが得られます。
■ よみがえる彫刻
長い間修理されていなかった鶴の彫刻、白木の部分はすべて修理した部分です。違和感が無いように周囲の色調と合わせることを「補彩」と言い、古く見せるためのいわゆる”汚し”は「古色」と言います。彫刻の修理はこれらの総合的な修理です。
■ 建立当初の姿に戻そう
せり上げ二重鉾(二段構造)。今までは自転車ペダルを改造したもので昇降していましたが、「山車を本来の姿に戻す」ために糸巻きを復刻し綱を張り直しました。まだまだ修理半ばですが、静岡に伝わる貴重な山車を本来の姿で後世に伝えてゆきたいと思います。
お問い合わせ
山車・屋台・神輿の無料点検、修理、メンテナンスなど行っています。山車の健康診断(無料点検)・修理計画の作成や助成金申請のお手伝いもしていますので、お気軽にご相談ください。
工事内容一覧
【木工事】
(新調)梶棒(樫材)
(新調)車輪(欅・樫材)焼き嵌め
(新調)梶部材(樫材)
(新調)上段鉾せり上げ糸巻き(樫・桜材)
(修理)上段鉾建具(檜材)
【幕工事】
(新調)五色三方幕
(新調)染房付き御簾
【漆工事】
(新調)車輪木地呂漆 及び 漆箔
【彫刻】
(修理)上段鉾「鶴」