こんにちは、祥雲です。
木材売り場といえば、ホームセンターの外のエクステリアコーナーに並んでいるものをイメージしますよね。
ただ、よくよく考えてみれば、木はみんな山で育ち、切り出され、乾燥、加工、流通を経てそこに並んでいるわけです。目には見えない人の手がそこにあります。
今日は、浜松の山中から引き出したひのきの巨木を通じて、祥雲の木材についてご紹介します。
■ 素晴らしい木との出会いは人との縁
樹齢300年、長さ11メートル、直径90センチの”天然”ひのきです。すごい木です!
なぜ”天然”を強調するかというと、今は植林された”養殖”ひのきがほとんど。一般に天然は赤身(材木として使用できる堅い部分)がしっかりしていて、ゆっくり育ち木目が細かい、彫刻にしても建築材にしても強靭で長持ち、そして日本の風土が生んだ希少性にあります。
それをもって樹齢300年とくれば、このひのきの偉大さを分かっていただけると思います。
ご連絡をくれた方は、彫刻や山車・文化財修理を行っている私たちの仕事内容をご存じで、祥雲だったら活用できるのでは、と思ってくださりこの素晴らしい木と巡り合えました。
■ 山だし
恐れ多くも山(=神の領域)から人間の世界へ木を運んでこなければいけません。
山だしの仕事は祥雲にはできません。日本の誇る林業のプロフェッショナルの力を借ります。
山出しの技には脱帽しました。周囲の木々にロープを張り、少しずつ坂を上り下り・・・、臨機応変に動かしながら目的の場所まで持ってくる。テレビでは木を倒すところはよく映りますが、運ぶ仕事にもっと着目してもいいなと思いました。
使いたい長さに分割し、ひとつずつ写真奥の方向に運びます。ロープをかけた周囲の木々に手伝ってもらいながら移動させていきます。
斜面をゆっくりと滑り降ろし、積み込みの場所まで無事に山出しできました。ほっと一安心です・・・が、ここからは祥雲のお仕事、車に積み込まなければいけません。
雨も降ってきたし、丸太とても重いので車両がちょっと浮きました!でも何とか積み込み完了。安全運転で静波の工場まで戻りました。
作業のようすを動画にまとめました。祥雲のyoutubeチャンネルもコッソリあるんですよ~(音量注意!)
■ 製材(せいざい)
さーて、無事に工場まで運ぶことができました。
祥雲の工場でもそれなりの大きさの加工ができますが、大径のものとなれば話は別!またもやプロにお願いするしかありません。一路、島田市へ
運び込んだのは島田市の伊藤製材さん。祖父の代から3代お世話になっている製材所です。
良い材木になるためには「乾燥」が命です。この大木もすぐには使えませんから、まずは半割り(1/2)に挽いて、数年間天然乾燥させます。
まるで大井川鐡道のSLのような製材機械、黒光りしてかっこいー!自走する台に材料を固定し、帯鋸(おびのこ)に通して材料を割ります。
どこに鋸を入れればこの材料を一番価値がある材木になるのか、伊藤さんの長年の経験で挽いてもらいました。
丸太の中央にたて線が通っているのが分かりますか。鋸が通り木がふたつに割れていきます。大木が曳かれる様子はもはやエキゾチックな領域に突入します。
白く美しい木肌。真ん中に見えている亀裂のようなものは木芯(もくしん=木の芯)です。芯の部分は割れが入るので使いません。
天然ひのきにも関わらず、江戸時代の人がちゃんと枝を払ってくれていたので大きな節はありません。この木がどれだけ大切にされてきたかがよくわかります。
製材の様子も動画にしてみました。こちらは音量を下げてあるので大丈夫だと思います。
■ どうしてこんなにすごい材木が必要なの?
木は山にいくらでもあるし、材料にこまることなんてあるの?普段の生活の中でそう感じるのも自然だと思います。
聞いた話によると、京都の金閣寺の第三層の床板は一枚板だったそうです。第三層は3間×3間(5.4m×5.4m)さぁ、この板を山から探してきてくださいと言われて探すことはほぼ不可能です。
木芯に近いと板は割れてしまうので、芯より外側で幅が6mくらいある木でないといけません。そうなると、木の円周は18.84m以上は必要です。これはとんでもない巨木で、屋久島の縄文杉でも16.4mだそうです。ほとんど神さまです。
金閣寺は極端な例ですが、私たちのような彫刻・山車・文化財などで使われる材料も考え方は同じです。
1.日陰で年月をかけて少しずつ育った、年輪の緻密(ちみつ)な材 2.木芯の無い、芯去り(しんさり)材 3.10年以上の天然乾燥
効率が悪くても、使えない部分がおおくても自社で木材を調達し、長い時間をかけて天然乾燥させる。そんな仕事のやりかたを90年以上続けています。
その都度、材料を仕入れるのがあたりまえの時代になって何十年もたちますが、祥雲ではひのき・けやきを中心に天然乾燥材をストックしています。
すばらしい木との出会いは祥雲にとってありがたいご縁です。きちんと管理し、使いたいと思います。
■ おしまいに
実は他にも材料置き場をもっているのですが、やはり維持費やら歩止まりやらで経費が掛かり大変です(笑)
それでもよいものをお出しするため、日々材料とにらめっこしながら過ごしています。ぜひアナログなこの仕事、応援してください!
それでは!
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